タスクシフトで変わる看護の現場!浅ノ川総合病院の実際と工夫 

タスクシフトで変わる看護の現場!浅ノ川総合病院の実際と工夫 

病院概要   

・医療法人社団 浅ノ川総合病院(400床~) 

・看護部長: 柳 美知代様
・病棟師長: 近藤 香奈恵様  
地域連携室 事務: 坂本 泉 様 

scree導入以前に抱えていた課題を教えてください 

近藤様: 当院に限らず、多くの病院がそうだと思いますが、人手不足は常に深刻な問題でした。特に看護師は、外来でも病棟でも業務が非常に多岐にわたり、常に時間との戦いです。入院される患者さんの対応一つ取っても、問診だけでなく、書類の説明、ご案内、場合によっては緊急対応も加わりますから、一人ひとりの患者さんに十分な時間を割くことが難しい状況でした。 

入院患者さんへの対応は、特に看護師の負担が大きかったですね。予定入院の患者さんは、看護師が対応するのが基本なのですが、手が足りない時は、他部署のスタッフに「アナムネだけお願い」と依頼することもありました。しかし、これでは一時的な対応に過ぎず、根本的な解決にはなっていませんでした。さらに、緊急で来院され、そのまま入院となる即日入院の患者さんへの対応も大きな課題でした。救急の患者さんは予測が難しく、どうしてもその場の看護師が対応することになり、本来の業務が中断されがちでした。 

問診は患者さんの状態を把握する上で非常に重要ですが、これも看護師の負担が大きかった部分です。特に、最初のうちは内科では比較的定着していましたが、それ以外の診療科では、看護師が忙しいと十分に問診が行き届かず、情報が不足したまま病棟に上がってしまうケースが多々ありました。そうすると、病棟の看護師が改めて情報収集を行う必要があり、二度手間になってしまうんです。 

具体的にどのようにタスクシフトを進めましたか? 

坂本様: 当院では地域連携室のスタッフがscreeを使った問診に大きく関わっています。当初は予定入院の患者さんへの対応がメインでした。看護師さんが忙しい時に「screeだけお願い」という形で、私たちが立ち上げを担当していました。患者さんご自身で入力できる方には説明し、高齢の方や操作が難しい方には、私たちが代わりに操作を行う形です。 

現在は予定入院だけでなく、即日入院の患者さんへの対応が私たちのメイン業務となっています。地域連携室がその対応を担うことで、急な入院にもスムーズに対応できるようになりました。 

screeは入院業務をサポートしてくれるサービスですが、外来でも日々screeを活用しています。外来の看護師さんから直接依頼の電話があると、私たちが外来に出向きます。もともと入院書類の説明は業務の1つですが、それに加えてscreeでの問診も行っています。外来の看護師さんが診察を回したり、検査の対応をしたりと多忙な中で、問診という重要な業務を引き継ぐことで、外来全体の業務が非常にスムーズになりました。 

近藤様: 外来は常に人手不足だったので、scree導入以前は、入院患者さんの対応をしつつ、診察や検査を回すのは本当に大変でした。入院時の問診も不十分なまま病棟に上がってくることが多く、回らなかった部分を病棟で肩代わりするような仕様でした。 

今はscreeで問診や書類説明を他職種に引き継いでいただけるようになったことで、外来の看護師は、患者さんの状態把握や診察介助など、より専門的な看護業務に集中できるようになりました。それから、外来でカバーしきれていなかった、つまり病棟に負担がかかっていた部分が、今では全てクリアされてきているので、病棟も楽になっています。screeで必要な情報が揃った状態で受け入れられるので、病棟看護師の業務負担も大幅に軽減されました。 

タスクシフトを進めるにあたり障害はありましたか? 

近藤様:部長からは段階的にタスクシフトを進めたいという意図がありましたが、具体的な動き出しには時間を要しました。scree導入前は、病棟外来問わず看護師から強い懸念が出され、「タブレットでの問診は、高齢の患者さんにつきっきりになるのではないか」「時間がかかりすぎるのではないか」という声がありました。 

また忙しいのは看護師だけではないので、当院の場合地域連携室や入院支援センターの職員から「自分たちの仕事が増える」という声も少なくありません。「それはできません」「やりたくありません」という声が上がることもあり、なかなか一歩を踏み出せない状態でした。 

坂本様: 私の場合は、たまたま同時に色々なことをこなすのが好きなタイプだったので、新しい業務でも問題なく対応できました。また、普段から上司からお仕事の話があったら時に基本的に「イエス」と受けていたので、screeについても「じゃあやってみようか」という雰囲気で始められました。できないことはできないと明確に伝えるようにしていますが、特に大きな不満はありませんでした。私の他に同じ業務をしている2人も、この業務を自分たちの仕事の一部として捉えているようです。 

柳様: 坂本さんのようなスタッフがいてくれたことは本当に大きかったです。彼女はもともと発熱外来の対応も長く担当していたように、マルチに業務をこなせる方でしたから。また、私たち看護部も、screeの導入は決して現場任せにはしませんでした。「実は今こういう状況だし、一時的でも、少しでもいいからやってほしい」と具体的に伝え、協力を仰ぎました。すると、「これくらいならできるかも」「ここまでならできそう」という風に、徐々に業務範囲を広げていってくれたのです。ある程度のトップダウンで進めないと難しい部分も正直ありましたが、現場の「やってみよう」という意欲が非常に重要でした。 

「やってみよう」という意欲を引き出すためには、やはりフィードバックです。看護師以外のスタッフからすると、「これって本当に楽になっているのだろうか」と疑問に思う時があるかもしれません。そんな時に、「いや、すごく楽になっているんだよ」「助かっているんだよ」と、私たち看護部から直接伝えることを意識しました。自分たちのやっていることが病院全体の効率化に貢献している、という実感を共有することが大切だと考えました。また、地域連携室と病棟間で意見をすり合わせ、screeでどこまで対応してもらうか、明確なチェックリストを作成しました。これにより、タスクが可視化され、お互いの役割が明確になったことも大きかったと思います。 

screeで現場の業務が楽になった実感はありますか? 

坂本様: 地域連携室全体で、月に約10件から15件ほどの入院問診をscreeで対応しています。これは、以前なら全て看護師が対応していた業務ですから、その負担軽減効果は非常に大きいと言えます。 

近藤様: この件数は、私たち看護師にとっては本当に助かる数字です。screeで問診が完了した状態で病棟に患者さんが上がってくると、看護師はそれを確認して記録に反映させるだけで済みます。もちろん、点滴や書類作成など他の業務はありますが、情報収集にかかる時間は劇的に短縮されました。入院の書類説明なども事前に済ませていただけるので、病棟での仕事が減り、看護師がより患者さんのケアに集中できる時間が増えました。 

坂本様: 患者さんからの反応も良いと思います。半数くらいはご自身で入力できますし、高齢の方でも施設の方が付き添っていらっしゃると、その方が入力してくださいます。特に若い方だと「こういうのあるんですね」と興味を持ってくださる方もいますし、「これ便利ですね」と言ってくださる方もいます。 

ただ、「字が小さくて読みにくい」とか「操作が難しい」という声もあるので、そこは私たちがサポートするようにしています。 

近藤様: 患者さん自身が自分の情報を入力することで、より医療に参加しているという意識も高まっているように感じます。自分ごととして捉えてもらえるのは良いことです。また、ホームページからもscreeを通じて事前に問診を入力できる仕組みになっていますが、まだその活用度はこれからといったところです。事前問診の機能が周知されれば、患者さん自身のスマホからの入力も増えていくと思います。 

柳様:他職種の方々のscreeに対する意識については、最初は「自分たちの仕事が増える」という抵抗感があったかもしれませんが、今では「これがないと困る」「すごく助かっている」という意見が出てくるようになりました。これはアンケートを取ってみて初めて分かったことですが、やはり自分たちの業務が病院全体の効率化に繋がっていることを実感してくれているのだと思います。現在、1年ごとの更新に合わせてアンケートを取って評価しており、その結果を表にして広報に出してもらっています。スタッフへフィードバックすることで、さらにポジティブな意識へと繋がっていくと期待しています。 

これからscreeをどのように活用していきたいですか? 

柳様: 外来でもっと活用したいですね。今screeが導入されている外来は全て、screeで問診を行うようにしたいです。内科から始めて、最初は抵抗がありましたが、今では手放せないです。患者さん自身に入力していただき、それが記録になるというのは、絶対に助けになるはずです。 

近藤様: 私も同意見です。患者さんにできることはなるべくやっていただく。そして、そこで得られた情報を、看護師がより質の高いケアに活かす。これが理想的な形です。浅ノ川総合病院では、screeでの問診だけでなく、患者さんのリストバンド装着や、個室利用患者への書類説明まで地域連携室のスタッフに担当してもらっています。ここまでやってもらえると、病棟看護師の業務時間はかなり短縮されます。バイタル測定や環境整備、指示に基づく聞き取りなど、本来看護師が行うべき業務に集中できるため、患者さんへのきめ細やかなケアが可能になります。クリニカルパス対象の自立した患者さんなら、screeで必要な情報が揃い、説明まで事前に済んでいれば、本当にすることがないくらいです。 

screeの導入を検討されている病院や、業務改善を目指している病院に、アドバイスをお願いします。 

柳様: 私たちは、チェックリストを作成してもらうこと、病棟の意見を聞くことを中心に意識していました。業務改善はタスクを可視化して何がシェアできるか確認しながら進めていく必要があるので、まず何に困っているのか、何がシェアできそうなのかなど現場の声を聞き続けました。現状を正確に把握し、整理した上で、「これならできそうかな」ということを、少しずつでもやらないと、現場任せにしてしまうのはかわいそうです。  

そうして作成されたチェックリストによって、共有できるものができ、データも取れるようになりました。「これだけ進めばこれだけ助かっている」「こんなにできるようになった」というような成果を、見える形で現場に示してあげると良いと思います。 

そして、その部門のリーダーを誰にするかという人選も非常に重要です。看護師の中にも新しいものに抵抗がある人はいます。特にベテランの方だと、「自分たちの仕事が増える」「残業が増えるのではないか」といった意見が出やすいかもしれません。しかし、今回の坂本さんのように、新しい取り組みを前向きに進められる人材がいると、導入は格段にスムーズになります。